【ステラ・アドラー・システム①】~導入編~

「表現者として腕を上げたい!」


そう思った事ってありませんか?


僕は今は都内でアクティングトレーニングやキャスティング・制作を生業にして生きている、裏方の人間です(年間大体10000症例を扱います)。

最初にクライアントさまのやりたい事や意図を伺ってから演技の処方箋を出すスタイルを主としています。イメージとしては、演技のお医者さんだと思ってください。

そんなわけで、様々なクライアントさまと接し、様々な仕事をしてきましたが、ここ10年で面白い事に気づきました。

それは『この10年でクライアントさまのニーズがかなり変化したぞ!』という点です。

結論から言うと、以前は「腕を上げていい作品にコミットしたい!」という依頼が多かったのですが、昨今では「とにかく上手くなりたい(売れたい)!!」という依頼が圧倒的に増加したのです!!



でも、僕はこれに関しては至極 “当然の流れ” だと思っております。時代の変遷によってニーズが変化するのは当たり前ですからね(今、メガドライブを欲しがる子供って少数派……っていうか、限りなく0に近いですよね。僕は幼少期、クリスマスに「お父さんメガドライブ欲しい」と頼んだ記憶があるのですが、父もよくわからなかったのか、枕元に出自不明のキン肉マンの携帯ゲームを設置されたことがあります…。ごめんなさい、脱線です)。




Vtuber・アイドル・YouTube等の配信等……。

間近に簡単にトライできるジャンルの表現が爆発的に増加したということも大きな原因なんでしょうけども。


個人で手軽に表現業にダイブすることが容易な時代。

ややもすれば「運さえあればワシかてワンチャン乗れるんとちゃうか…!このビッグウェーブに……!!」と逸る気持ちを抱えるのも、よくわかります。


ぶっちゃけ、時代は『時短の時代』です。

時は金なり。という言葉があるように、時間だけはお金で買えませんからね。

今では、ポケベルを使う人はもういません。

携帯電話だってこの15年でものすごく進歩しましたものね。


ただ、演技を上手くさせる確実な方法って実は確立されていません。

近代俳優育成術のプロトタイプが登場して早や100年くらいが経過しますが、無いんですよ。演技だけ。確実に上手くなる方法が。

悲しい事実ですが、冗談抜きでこの業界は10000人の俳優がいたら9999人は淘汰され去っていく環境です。それにも理由があります。



上手くなるには時間がかかるからです。

しかも、自分の感覚と他人の感覚は違います(クオリアの違いと言えば分かる人は分かるかもしれませんね。他にも色々話したいのですが、莫大になるため今回は割愛します)。


確実な上達を導くには、この部分に科学的にコミットし、発信者と受信者の感覚の授受にズレを無くすことが必要です。


今の僕の考えとしては、『科学を用いた体験取得』で、『なるべく短時間で俳優さんの能力を底上げし、根本的なクリアに導けるようにコンテンツを開発 → それを用いて可能な限り速度を上げて過度な負担なく習得させる』が最善の手法だと思っています。



ただ、僕が若かりし頃、まだ演技を始めて間もなかった20年前はどんな感じだったのか――――お伝えできればと思います。




今回は、2000年代初頭のワークの内容になります。

当時ミジンコの頭のように尖っていた “若かりし頃の僕の失敗談” を例に、どう改善すれば良いのかを解説していきます。

正直に言います。

僕は当時「面白いワークショップなんて無ェ!」と超絶イキりにイキっておりました。


皆さんもそんな時期がありませんでしたか?

事務所や養成所、劇団の稽古で「これってイミある?」なんて思ったこと、ないですか?

実は結構ある方も多いのではないでしょうか。


ま、それも当然です。だって、感覚でやっている事を説明しようとしようとする事自体がなかなか難しいですからね。

科学が無いとそういう事が起こるわけです。

教える側が「これはこういう狙いがありますよ」って伝えずにやる事も多いですしね。

世間には、「名プレイヤーが名監督とは限らない」なんて言葉もあるくらいです。

まあ、これについては詳しくは『【ステラ・アドラー・システム③】~完結編~』でお話ししますので、乞うご期待という事で( ^ω^ )ニコニコ



では、上記を踏まえて質問しますので、品行方正な俳優諸氏の皆さん。

ぜひ、想像してみてください!レッツ トライ!



仮に皆さんが病院に行き、医者の先生に「頭が痛くて……」と伝えたとします。

その時、先生が「おっ、じゃあ、手術しましょう!麻酔抜きの開腹手術ですね!」ってサラッと返答する事ってありますか?


……いや、絶対そんなヤバい返答をされたら聞き返しますよね。「え、なんでですか?」って。で、その医者は答えるわけですよ。

「え?だって切ればよくなる気がするから!多分ね!」と。



あり得んだろ……。そう思いませんか。



でも、演技だとそういう状況ってとっても起こっているんですよ。僕はそういう状況を密かに「摘発されないパワーハラスメント」と命名しています。



何度も伝えますが、僕はそうならないように演技上達に関して、認知の科学と確かな実践をモット―にクライアントさまに接するよう心がけております。




ただ、そんな中、初めて「あ、面白いかも」と思ったワークがありました。



当時、右も左も分からない世間知らずな僕が叩いた門が「ステラ・アドラー・システム」でした。




次回はそこで、僕がどんな体験をしたのか、実話を基に面白おかしくお話していきます(最初に断っておきますが、僕が100パーセント悪いエピソードです笑) 

僕が派手にやらかした話をベースにお話をしますので、令和の品行方正な俳優諸氏の皆さんは決してマネしないでねという教訓的な内容を多々含みます。


当時の僕に強烈な印象を残したマスター・ティーチャーや、今の僕からは想像がつかないほど尖り倒した『若かりし頃の僕』が登場します。


お楽しみに!



~続~




【ステラ・アドラー・システムとは】
ロシアの偉大な演技人スタニスラフスキーと共に演技研究を行った唯一のアメリカ人女性俳優ステラ・アドラー(1901~1992)が提唱した演技システム。『アクションは俳優が自分のキャラクターの言うことを正当化するための方法であり、キャラクターを演じる方法はアクションを演じることである(引用)』とされる。

TAS studio

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