【ステラ・アドラー・システム②】~入門編~
~前回のあらすじ~
演技の上達には時間がかかるという話をしてきました。今回は、若かりし頃の僕が実際に『ステラ・アドラー・システム』でどんな稽古を体験し、どう派手に失敗したのか、実話を基にお話ししていきます。
さて、僕が初日に飛び入りで参加し、いきなりやらされたのは「イマジン・イフ」という想像系のワーク数種でした。
余談ですが、当時「イマジン・イフ」系統は他の流派でも似た類のワークが流行ってました。
「飲み物を飲むエクササイズ」や「物体を持ち上げる」等々が類似するワークだと言ってよいでしょう(あくまで当時の話です。現在は少しだけ変化した流派もありますので一概には言えませんね)。
しかし、その場でトライしたワークは未だかつてやった事がないほど密度が高く、そして厳しい物でした。
(ちなみに僕の前にやらされていた若い女性の方々は、3人連続で号泣していました。)
僕もチャレンジしましたが、勿論、ケチョンケチョン。
僕のライフは無惨に0になります(「やめて、Sakuのライフはもう0よ」と止めてくれる人はいませんでした)。
当時は指導中のマスターティーチャーが「セ●ション」のフレ●チャー教授や「フルメタルジャケ●ト」のハ●トマン軍曹に見えたほどです。
莫大な情報を突きつけられ、僕がとれた行動はただ一つ。
それは「気合いを入れてメンチを切る」ことぐらいでした。
……。
ええ。わかってますよ。
ひとえに阿呆の所業です(令和の品行方正な俳優諸氏の皆さんはマネしちゃダメですよ!! 昭和の名残です)。
でも僕は高校時代は応援団や格闘技をやっていましたし「屈するものか」と必死だったのですね。
その日は全くできなかったのですが、ワークが終わって1人、大学の共同練習場で次の日のワーク開始時間直前まで寝ずにぶっ通しで14時間くらい稽古しました(ちなみに屋外でした)。
当時のモットーは「出来るまでやれば出来る」。
そんな脳筋プレイを自身に課していました。
そんなこんなで、僕は次の日を迎えます。
オラァ!それなりに出来たぞ!と思い込み、またもや予約をせずにそのワークに殴り込み「昨日の続きをさせて下さい!」と頼み込んでワークを行いました。(くれぐれも令和の品行方正な俳優諸氏の皆さんは必ず予約をとりましょうね!)
するとマスターティーチャーから、「万里の長城は1日にして成らず」的な事を鬼のような形相で猛烈かつ熱心に、“非常に大きな声”で訓示頂きました。
周囲の参加者はあまりの苛烈なお言葉に涙を禁じ得ない方も複数名いらっしゃいましたが、僕は心の中で負けるものかと奮起し、
再び気合いを入れてメンチを切りました。
(くれぐれも昔のイキった僕の愚かな所業です。令和の品行方正な俳優諸氏の皆さんは絶対にマネしないでください。)
マスターティーチャーと僕の間の熱い意思疎通(?)が終わった頃、再びトライするチャンスを頂きました。
そして、僕はイマジン系のワークを“頭脳”で習得したということを見せつけようと頑張りました(勿論今の僕からしたら恥ずべき腕と行為だったと猛省しております。本当ですよ)。
しかしマスターティーチャーは折れず病まず諦めずのこの愚かな姿勢が気に入ったらしく、次のワークを提示頂きました。
それは、「特定の状態を計算し、身に纏うイマジン・ウェア」という(地獄の)ワークでした。イマジナリーボディの前哨戦みたいなものですね。
イマジン・イフだけでも難しかったのですが、その数倍の処理能力を当たり前に求められるワーク(というか、絶対に初心者には不可能な複合システム)だったので、僕はこれに制圧され、負けを認めつつ気弱にメンチを切りました。
しかしマスターティーチャーはこの状況下でも折れない僕に対して、なぜこのワークが必要か。どうして複合的に組み合わせることが必要か。そして、現場 ————というよりも、より良い作品を生み出せる俳優としての心構えをシステマティックに説いてくださいました。
3時間のワーク中、僕の不出来なワークを熱烈にウィットの効いた言葉でコケにしつつ、1時間ぐらいは付きっきりで教えてくれました。
失礼な話ですが、僕は「ステラ・アドラー・システム」に感動したというよりも、その時、初めて、システマティックに上達する方法を組める人がいる!という事に心を動かされ、毎日、6~8時間ほどの自主稽古を行いつつそのレッスンに行く事に決めました。
大学には通っていましたが、2年生になった段階でほぼ行かなくなったので、実質それが僕の大学生活といってよいでしょう。
ではここまで長くなりましたが、何が言いたいかというと、こんなに時間をかける必要はなかったということです。泣
実はイマジナリー系統のワークは、今なら5~10分あれば簡単に落とし込むことが可能です。
詳しくはまた次回!
完結編でお会いしましょう!
~続~
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