宣伝材料資料 ~ボイスサンプル・デモリール・宣材写真について~ 基礎編その②
【前回のあらすじ】
<オーディションを行っていたクライアントさまは、演技を見ていなかった!>
脳細胞に暇を出し、せっせと腕だけを上げ続けた若かりし頃のアクティングトレーナー Saku。腕だけをあげればこの業界をシメられると思い続けた男はシメるどころか、逆にシメられるという謎の現象に遭遇し、すべてを捨て去り武者修行の旅に出る。
流浪の果てに見つけたひとつの真実。
それは、オーディションを行っていたクライアントさまは、演技を見ていなかった!というか、演技の判定の方法を知らなかったのだ!ウッソマジで⁉
さて。
前回は『選ぶ側の心理と、実際に選ばれる際の真理』を知らなかった、というところまでお話ししましたね。
演技を見るのは、必ずしも演技を見て『分かる人』では無い。
ここは盲点でした。
上記の真実に気付いたとき、僕はかなりのショックを受けました。
まだ克服すべき課題があれば「駆逐してやる……!」と巨大な敵に向かっていける気持ちにもなれそうなものです。
が、単純に「ちょっとだけ頭を使って気付いていれば、そんな苦しみも労力もいらなかった」と悟った際、誰しもが、得も言われぬ気持ちになるものです。
「恐らく、幻覚系の斬魄刀を食らったモブキャラの気持ちはこうなる。」
帰り際の電車の中で、ノートに向かって久々にメンチを切りながら書き殴ったことを今でも覚えています。
その時はノートが相手だったので、かなりの剣幕で気合いを入れてメンチを切っていたことを告白いたします。
答えは簡単でした。
考えてみれば当然のことだったのです。
普通に考えて、クライアントさまは大抵見ず知らずの人を見るわけです。
僕は、確かに腕をあげたという自負はあります。
しかし、当時僕が担当していた俳優の方々は、ゴリゴリに売れている人(周知度財産や認知接触回数が高い状態)では無く、これから芽が出そうな才能ある方々でした。
なので、僕は、演技の腕を上げるのはもちろんのこと、役とのマッチ率をあげなければいけませんでした。
では、マッチ率は、どこで上昇させるのが妥当なのか。
それは表面に来る『材料資料』です。
例えば、『北斗〇拳』の『ジ〇ギ』的なキャラクターが欲しい場合、『アンパ〇マン』の『ホラ〇マン』みたいな人が来ても駄目ですよね?だって欲してないもの。
え?例えが分かりにくいですって?
じゃあ、この例で考えてみましょう。
あなたはオーディション担当者です。今回、欲しいのはサラリーマンです。
手元に宣伝材料写真があります。以下の3通りです。
① 見た目普通。いかにもこれから踊りだしそうなダンサー的なポーズと格好をしている。
② 見た目普通。いかにも先ほど、アイドルグループのライブに行って「ひと汗かいてきました」的な雰囲気が漂う。
③ 見た目普通。いかにも入社して間もない印象。髪型をサラリーマン風に固め、スーツを着ている。
どの写真に注目するでしょうか。また、一般的にはどんな方が選ばれそうかを想像してみてください。
まあ、品行方正な俳優諸氏の皆さん……ないしは一般的な考えをお持ちの方であれば、概ね③を選ぶのではないでしょうか。
勿論、知名度があればこの限りではありません。
ギャラ交渉やスケジュールマネジメントが必要ですが、①や②の状態でも、大いに通る可能性もあります。
が、あくまで今回は基礎編なので、「これから売れたい!」と思っている俳優諸氏の皆さん方に対するアプローチに徹しようと思います。
ぶっちゃけ、僕は、オーディション時には毎回格好良く撮れた写真をバカのひとつ覚えのように貼り付けていました。
まさに親バカだったのでしょう。
子を思う親バカ……素敵な響きです。
しかし、本当にタダの馬鹿と化す時もあるのです。場合によっては。
企画の内容が「サラリーマン」を主軸とする話だとすれば、オーディションを受ける側は、サラリーマンの格好で宣伝材料写真を作り、デモリールだとその雰囲気が根本的に出せる演技や服装、芸風まで備える必要があります。
これは舞台・映像・声の芝居全部に共通で使えます。
ジ〇リの芝居が欲しいのにデ〇ズニーの芝居をされても「おおぃー‼才能の無駄遣い————ッ!」ってなっちゃいますからね。ひとえに勿体ないです。
でも、結構事務所や養成所でも知らなかったり、教えてくれなかったりします。特に駆け出しの方は。
なんでかって?だって事務所や養成所は、本来キャスティングする側ではないですからね!
後々、時が経過して気付いた場合にダークサイドに堕ちかねませんから、早いうちに気付けると有益でしょう。
まあ、基礎編なので今回はこの辺までにします。
要約すると、『これが俺の本体のハンサム顔だ!』ではなく『その場で求められた役柄で宣伝材料資料を作りましょう』ということです。
それが分からないと『な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかがわからねーぜ……』状態に陥ることも、ままありますから。
どれもこれもここまでは簡単です。理解さえすれば簡単に備えられますしね。
少し難しくなるのはこれ以降です。
映像の芝居だったら、求められたキャラクターの在り方や、脚本だけではないカメラや照明・視点の読解。
舞台なら……まあ、ここに関しては色々星の数ほどあるのでケースバイケースでしょう。
ちなみに僕はこの件以降、監督や制作現場、クライアントさま、スポンサー、プロジェクトが何を欲し、狙っているか、作品を通してマーケットでどんな反応を期待しているのか。
そしてそれを行うにあたって、演技法は監督や制作会社によって何が好まれていて、ニーズはどこにあるかを分析してアクティングトレーニングを行うようになりました。
勿論、現在はSNSという媒体がありますね。そのため、数字主体で選んでいる場合も多いですが、その先には結構、知らないことが多かったりします。
いつでもそうですが、表面的な部分はどなたでも “ある程度” わかります。しかし、深部は専門家でないとわからない可能性が高いです。
「(そこそこの)数字持ってるから~♪」だけでキャスティングすると、危ういかもしれないと、業界全体も気付き始めました。
とはいえ、持ってないとそれはそれで厳しい時代ですけどね。
しかし、今回SNSは無視します。なぜなら実力主義でキャスティングをしたい風潮も確かに生まれつつあるからです。
なので、逆に考えます。
(SNSの知名度を無視し)従来通り、腕を上げ、オーディションで徹底すれば『必ず勝てる方法』を限定的に提示します。
それは、『オーディション側が欲しい材料を揃える』です。
これを大事にしてみましょう。
とまあ、普通に考えたら簡単ですよね。逆に理解できない人はいませんよね?
欲しければ採用しますもんね。ソシャゲと一緒で。
実際、SSRのキャラって欲しいじゃないですか。見た目だけでもSSRに近づけようという事です。
声の芝居の場合はそういう、ニーズにあった声をボイスサンプルで作り、組み替えられるようにしておいた方がいいですね。
さらに言えば、『ボディの存在する声』の出し方と『受かるボイサン脚本と構成』の仕方。
映像なら『多種多様なセルフテープ+デモリール』と『それがそのように見え、かつ腕を発揮出来る機材の利用と脚本』です。
そうすると上がるんですね。アキュラシー(オーディション選考確率)が。
2022年、いや2023年は業界全体が変わり始めたこともあり、ほんの少しですが、「腕や性別、ルーツを度外視した純粋に良い人財」の発掘化を進める風潮になると思います。(恐らく業界全体ではないです。部分的にです。しかし、必ず発掘は進むでしょう。)
これ以上はブログに書き切れないほど更に分岐していきます。
細かくなるので書き切れませんが、需要も多いので、しばらくしたら、声優さんや映像俳優さんに向けて、初級から中級者向けのワークを行おうと思っています!!
声優さんや映像俳優さんには絶対に知っておいてほしい内容&備えておきたいスキル……などなど、有益な情報が盛りだくさんです!
ということで、TAS studioで、
『声の芝居 業態別に必要な分析と収録方法・持つべきボイスサンプル』
についてのワークショップを開催します!!
日程:12月28日(水)と29日(木)各3時間制。
※28日は定員のため募集終了です!!
こちら、割と興味深いワークがずらりと出ます。
例えば養成所や現場で習得しようとしたら数年かかる事を、3時間で半永久的に確実に仕上げたりします。
なのでぜひ興味があれば。28日は埋まり気味なので、29日がおすすめです!
また、更にご希望者さまのボイスサンプルは、当スタジオと連携している芸能事務所が取り扱っている海外案件のクライアントさまに、参考資料として提示することも可能です!
ご興味ある方がいらっしゃいましたら、ぜひ下記リンクよりお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします~!
ってことで、今回は「腕重視」 → 「認知されないかもよ」ってお話でした。
いかがでしたか?
少し考えてみれば当たり前のことかもしれませんが、意外と盲点だった方も多いのではないでしょうか。
ワークではより詳細に解説していければと思いますので、ご興味おありの方はぜひ!
お問い合わせもお気軽にどうぞ。
ではまた、別の記事でお会いしましょう~!
次回は、科学的にやれば秒できちんと感情が出るという事をテーマに、ブログを書こうと思ってます。
~終~
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